近年医療関係者の間で東洋医学の方法論が再注目を浴びていますが、ヨガ、太極拳、気功で腰痛は治るのでしょうか。
腰痛治療にヨガ、太極拳、気功は本当に効くのかどうか、アメリカの大学が行ったレビュー論文をもとに調べてみました。
【前提知識】ヨガ、太極拳、気功は腰痛にホントに効く?
ヨガ、太極拳、気功には腰痛治療に効果はあるのでしょうか。
腰痛治療は一般的に難しいと言われています。
難しい理由は、腰痛が起こる原因にはさまざまなものがあるためです。
職場のストレス
カフェイン
脳のパニック
腰痛の原因には身体的なものだけでなく、メンタル的な要因が多いことが分かりますよね。
つまり、身体的なアプローチだけで行う腰痛治療にはおのずと限界が出てくるのです。
そのため、近年腰痛治療は「身体的なものだけではなく、メンタル面へのアプローチも重視しよう!」という考え方が増えてきています。
ヨガ、太極拳、気功に腰痛軽減の効果はあるのか
2020年フロリダ・アトランティック大学などが行ったレビュー(R)では「運動ベースの心身介入(MMBI)-つまり、ヨガ、太極拳、気功のこと-は腰痛にどの程度効果があるのか」ということについて報告しています。
「運動ベースの心身介入(MMBI)」というのは、「体を動かしながら、メンタルケアの効果も持った行為」のこと。
本記事で取り上げる
ヨガ
太極拳
気功
の3つをメインに調査しています。
研究結果
腰痛についての先行研究は32件あり、ヨガ25件、太極拳4件、気功3件の研究データから3,484人分のサンプルを抽出し、レビューをした結果がこちらです。
ヨガ、太極拳、気功は腰痛をやわらげ、抑うつ状態や不安などを軽減する効果があるという報告をしている
20代の男性は、長期間のヨガにより慢性的な腰痛が軽減、太極拳では急性の腰痛が軽減する可能性がある
ストレッチと比べた場合、太極拳の方が腰痛治療に効果がある可能性がある
気功についてはデータが3件しかないため、明確なことが言えない
全体的に見れば、ポジティブな結論が多い印象ですよね。
研究データはあくまで参考にとどめよう
ヨガ、太極拳、気功に関してポジティブな結論が報告されていましたが、このレビューだけで「ヨガ、太極拳、気功が腰痛治療に効果がある!」と言い切るのは難しいところがあります。
理由としては、
1.ナラティブ・レビューは客観性に乏しく、バイアスを軽減するためのメタ分析などが行われていない
2.選択された論文の多くは、「ランダム化比較試験」と言いながらも、ランダム化・盲検化の手段についての記載がない
3.試験期間が全体的に短く、長期的な効果についての見解がまったく分からない
4.気功のデータ3件でダメだったのに、なぜ4件の太極拳はOKなのかが不明確
という問題があるのですね。
1の「ナラティブ・レビュー」とは、簡単に言うと「患者の語る話に基づいたレビュー」のことです。
今回のレビュー論文は、ナラティブ・レビューの論文をまとめたもの。
ナラティブ・レビューは患者や試験者のバイアスを軽減することができないため、客観的なデータとして採用するには懐疑的な見解が多いという特徴があります。
そのバイアス軽減をするために、2の「ランダム化比較試験」を採用しているのですが、方法論の記載がないため、信憑性が担保されないということなのです。
そのため、このレビューだけだと「ヨガは素晴らしい!」とも言えるし、「結局腰痛治療への効果は証明できていない!」と言うこともできてしまうのですね。
【まとめ】腰痛は、ヨガ、太極拳、気功を併用するのが良い!
ヨガ、太極拳、気功が腰痛治療に効果的であるか、明確な答えを出すことはできませんでした。
しかし、下記のようなことまでは言えるでしょう。
客観的に信用ができる研究結果は得られていませんが、リラクゼーション効果のあるヨガ、太極拳、気功には腰痛治療のメンタルケア部分での効果が期待できる
運動療法の効果もかなり認められているため、普通のストレッチも合わせてやれば効果がある可能性がある
「腰痛=メンタルの問題でもある」という考え方はかなり一般化しています。
激しい腰痛にお悩みの方は、ヨガのような身体的なアプローチも取り入れつつ、メンタル面での腰痛ケアについても積極的にお考えください。