今回は、勉強にマインドセットは無駄という研究結果が出ましたので、ご紹介していきます。
そもそも、マインドセットが重要とこれまで思われてきた背景には、スタンフォード大学のキャロル・デュエク教授による「しなやかマインドセット」の影響だったりします。
「しなやかマインドセット」とは小学生数百人を対象に行った実験で、「やればできる」と教師が生徒を褒めてあげた方が成績がアップするというものです。
ところが、最近のマインドセットに関する説は、効果がない、もしくは効果が薄いという実験データが出てきているものが増えています。
例えば、パワーポーズ、マシュマロテスト、1万時間の法則などは、これまでかなり信頼されていた分、かなり不安になっている人も多いのではないでしょうか。
そんなマインドセット神話を崩すようなデータが新しく発表されました。
2018年5月に発表されたミシガン州立大学の研究データです。
今回の研究では2つのメタ分析が行われました。
①過去のマインドセット研究299件の中から365,915人分のデータを抽出
②57,155 人のデータのまとめ
今回の研究では、「マインドセットを変えたら学校の成績は良くなるのか」という仮説を元に調査を行いました。
その結果、マインドセットの効果量は0.08となり、マインドセットは勉強には効果がないと判断されました。
ちなみに効果量というのは、通常0.1〜0.2くらいの数値から「効果があると考えられるレベル」と判断されます。
従って、今回の研究結果から見ると、マインドセットは効果がないという結論が出たのです。
さらに補足ですが、「普通の授業」を教師が生徒に行って見せた所、その効果量は0.57という数値が出ました。
「普通の授業」は0.57なので、当然、効果があると言えるわけです。
なので、マインドセットは勉強には影響しないということが分かりました。
今回の研究の問題点
というわけで、マインドセットは勉強には無駄ということなのですが、実は今回の研究ではいくつかの問題も考えられます。
問題点は主に2つです。
①普通の授業についてのデータが微妙
②マインドセットについてのデータが微妙
①のデータというのは、期末試験などの大きなテストのみで判断すべきだったのに、いわゆる授業終わりの確認の小テストというような小さな試験結果まで考慮されたことです。
当然、授業終わりのテストであれば、試験結果は良くなりやすいので、マインドセットが影響したのかどうか判断がつきません。
②のデータというのは、マインドセットを鍛えた後に、ある程度の期間を空けて、試験を行ってしまっているという点です。
マインドセットの効果が直接影響を与えたのかどうか判断つきません。
マインドセットに都合が悪い結果だけが大きく着目されている
今回の研究結果である効果量0.08は老若男女すべての人を対象にした結果となっています。
しかし、学力が足りない人や勉強が苦手な人だけを対象にして、効果量を計測した場合、効果量0.19という結果が出ました。
0.19ということであれば、効果があると言えるレベルの数値ですから、一概にマインドセットが勉強に無駄とは言いずらいです。
また、学力がある人はすでにしっかりとしたマインドセットを持っている可能性があるので、マインドセットを鍛えても効果量が増えなかったという可能性が考えられます。
効果量に関する補足
また、マインドセットを鍛えた効果は、子どもの方が出やすく、大人の方が出にくいということが事前に分かっていました。
なので、今回の研究では、子供と大人の研究対象をもうすこし明確にする必要があったと考えられます。
さらに、学力がない人向けの教育系の効果量は、低いことが多いのが一般的です。
従って、今回の学力がない人の効果量0.19は割と良い数字ということが言えます。
なので、効果量の測定を学力のない人に限定すれば、効果があったということが出来ます。
故に一概にマインドセットは勉強に効果がないと言えないのではないかという疑問が生まれてきます。
まとめ
マインドセットは勉強には無駄の可能性が高い。
但し、これまで学習してこなかった人にとっては、マインドセットは効果がある可能性が高い。
現状は、デュエク教授の「しなやかマインドセット」には過剰に依存しないようにしましょう。
今回の研究結果には何点か疑問が残る点もあるものの、ひとまずマインドセットを重要視する必要はなさそうである。